失語症記念館
南イタリアの旅

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6.真夜中のシックス・センス

2002年 4月:

 夕飯も食べずに夕方の6時にベッドに飛び込んだ私は、深い眠りに即座に落ち、夜 中の1時半にパシッと目が覚めてしまった。部屋も暗ければ窓の外だって真っ暗。夫 は隣のベッドで気持ちよさそうに眠っている。ぎんぎんに覚めてしまった私の辞書に 眠るという言葉は全く見あたらない。でもやることがないので、頑張って寝てみよう と無駄な努力をしてみたが、やっぱり無駄な努力であった。

 こういう時のために成田で本を買ったことを思いだした。読み終わったら捨てても 惜しくないようにと文庫本を3冊、慌てて買ったんだっけ。ベッドランプをつけて行 動開始。荷物の中からすぐにその本は見つけだされた。んんーっと・・・題名は、 『シックス・センス』。確か映画になって結構ヒットしたやつね。

 読み始めて自分の失敗に気が付いた。これって、すさまじく怖い内容の本だった。 直訳すれば『第6感』・・・5感では感じられないもの、すなわち生き霊とか自爆霊 なんかが見えてしまう男の子の話だった。途中で読むのをやめるともっと怖いのでど うして良いかわからず、ずっと読み続けてしまった。怖いからよけい頭がさえるし、 目をつぶると血が滴る恐ろしい生き霊のイメージが頭に浮かんでこれ又怖い。だから、 ただただ読み続ける羽目となった。主人公の男の子が教室の窓から校庭の大きな木を 見たら、その木で首を吊っている人が怖い顔をしてこっちを睨んでいる・・・、ああ、 怖い!いやぁぁぁぁ、なんて本を読み始めてしまったのか・・・。こうなると夫の寝 息さえも怖くなってくる。

「ねぇ、ちょっと・・・ねぇ・・。」
隣のベッドに声をかけてみる。
「んんん・・、ん?どうしたの?」
「ううん、生きてるかと思って。」
「何やってるの?・・・まだ4時前じゃない・・・眠いよ。むにゃむにゃ・・・。」
夫の声を聞いて少し安心した私であったが、又彼はすぐに眠ってしまった。
仕方が無いので又読み始める。誰もが寝ている時間に、オカルト小説を読む私。ベッ ドの中で心臓をバクバクさせながら、しかもシチリアのホテルの1室で。ああ、疲れ る。2冊読み終わったところで夜が明けて、やっと明るい朝になった。明るくなれば こっちのものだ。もう怖くない。明るい太陽じゃないか。

「さぁ、起きて起きて!いい天気だよぅ」まゆみ、電池充電ばっちりOK!
「あのさぁ、うるさいし、明るくてよく眠れなかったよ。」嘘ばっかり、よく寝てい たじゃない。 
今日も元気に歩き回るぞう!だってまだマッシモ劇場しか見ていないものね。

 シチリア2日目の朝だ。今日は、沢山いろいろなところを見て回る予定。少し早起 きしてしまったけれど・・・ちょっと読書で頭と目が疲れたけれど、まゆみ、元気に 7時半には準備完了。ゆっくりと朝食をとって、9時前にはタクシーを拾っていざい ざシュッパーツ!

  最初に向かったところは私がここだけは絶対行ってみたいと切望していた場所、カ タコンベ・カプチーニ。カプチン会修道院の地下墓地を見るのだ。ここには8千体の ミイラが安置されている。特に1920年に亡くなったロザリアちゃんの遺体は特殊 な加工を施されたらしく、剥製化されて棺に入っているという。イタリアでは、いま だに遺体でミイラを作る習慣が残っているところが少なくない。
「ボンジョルノ!カタコンベ・カプチーニへお願いね。」
「了解、マダム達はカタコンベに行くんだね。ここの近くには沢山カタコンベがある よ。どうだい、このタクシーでずっとカタコンベ回りってのは。」
「なんて言ってるの?」
「いろんなカタコンベを見て回らないかとか言ってるみたい。ここら辺にたくさんあ るらしいよ。」
「冗談じゃないよ。ミイラなんて一つで沢山だよ。僕は別に見たいと思ってないんだ から!ノン、ノン、・・・そこ行ったら降ろしてくれるだけで良いって言ってよ。」
「あのね、そこでタクシーは捕まえられないって。だから待っててもらったほ方がよ いらしい。」確かに着いてみるとカタコンベの入り口周辺は人もまばらで、タクシー 乗り場もなかった。バスを使うにはまだ心の準備ができていないし、ここは他の観光 場所から離れているのでお登りさんの私達にはタクシーしか移動の手段がない。運転 手さん、じゃぁ、待っていてね。まゆみ、いよいよカタコンベへ! 

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最終更新日: 2010/08/29