失語症記念館
南イタリアの旅

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47.ミラノを歩けば

2004年 8月:

 ミラノのホテルはご機嫌だった。今回の旅で一番気に入った点・・・朝食ビュッフェにデデンとシャンパンが置いてある。モーニングシャンパン!なんていかしてるんでしょう。もちろんまゆみは、意気揚々と朝から夫のグラスと自分のグラスになみなみとシャンパンを注ぐのであった。
  予想したとおりの返事はわが夫。
「朝からシャンパンなんてボクは飲まないよ!」
「しょうがないなぁ、ついできちゃったよ。残すのは忍びないからこれは飲むしかないなぁ。仕方ない、仕方ない。」朝からグビグビ、ご機嫌まゆみである。
  ホテルからちょっと歩けば、そこにはミラノのシンボル、ドゥオーモがドーンとお目見え。目にしただけでバロック音楽が脳裏によぎってくるくらいのインパクトを持つ。ただし時間帯によっては、観光客とそれを狙ったスリやその他諸々で、ごった返しの人人人になる。ここにも豆を持ったおやじがたむろしていて、あっという間に手渡される豆をめがけて、これ又あっという間に飛び寄ってくる鳩たちに「フォト!フォト!」何て言われて、チップを要求されてしまうから要注意である。イタリアでは引いてはいけない。日本語でも良いから「ダメ」とか「イヤだ」と、こちらが不本意であることを伝えることが肝心だ。
  上を見上げると目が回る。針のように細かく細工されたドゥオーモの尖塔の美しさ。135本もあるという。時間があるのであればすいている時間にじっくりゆっくりと堪能したい場所である。もちろん私は、テクテク、グルグルと一人で歩き回った。
  この周辺にはモンテ・ナポレオーネと言うイタリアを代表する一流ブランドのショッピングストリートがある。そこを歩く日本人のほとんどが、グッチかフェラガモあたりのブランド名入りの大きな紙バックをさげている。でも私はどちらかと言えば、現地の人たちが利用する一般的な小売店で、名もないイタリアの服を買うのが好きだ。値段は安いし、掘り出し物に結構出会う。
  ヨーロッパではあまりデパートというものにお目にかかることが少なく、日本のようにデパートに行けば全て揃うという感じではない。ミラノも然り。専門店を吟味しながら歩くのは、ご婦人達には楽しいものらしいが、買い物はほとんど直感勝負という基本的に面倒くさがりやのまゆみは苦手なのであった。
  ドゥオーモ広場とスカラ広場を結ぶアーケードが大変美しい。12年の歳月をかけて作られたというこのアーケードは、ガッレリアと呼ばれている。床のモザイクの見事な色と模様、光が射し込んでくるまばゆいばかりのガラスの天井、漆喰のレリーフ。新バロック様式と新ルネッサンス様式が大変上品に融合し、独特の風情を醸し出している。中央十字路の天井に描かれた4枚のフレスコ画は必見の価値がある。老舗のカフェは高いけれど、やっぱり一度は座ってみたい。高そうなお店が並んではいるものの中に入って買っている客は少なかった。
  ミラノには魅惑的な美術館がたくさんあるが、どの建物を見ても重厚な作りなので、学校なのか美術館なのか、果てはアパートメントなのか見分けが難しい。美しい横顔で有名な『若い貴婦人の肖像』があるのは、ポルディ・ペッツォーリ美術館だ。完全な一個人、ミラノの貴族であったジャン・ジャコモ・ポルディ・ペッツォーリが、個人で収拾したという品々が並んでいる。まず入っていって、彼が住んでいたというその邸宅の贅沢さにビックリ。24室もあるんだ。しかも結構1室が広かったりする。そして、彼が譲り受けた父親の遺産で集めたというその収集品の数とその質にビックリ仰天。昔の貴族の資産って・・・お父さんいったいどのくらい残したの?まゆみはこういう所を知りたいの。
  この人は、一生独身だったというちょっと妖しい人である。確かに美術品を見る目は確かだったと思うが・・・この人が一生を捧げたのは父親の残したお金で世の中の美しいものを収拾するということだったのだ。羨ましくもあるけれど・・・。おかげで世界中の美しくて素晴らしいものをこうして今、私達は700円くらいで、好き勝手に見せてもらえる。1客、たぶん数百万を下らないであろうと思われる夥しい数のオールドボーン・チャイナのティカップが、おもむろに飾り棚の中に並んでいる。食器や家具のガラス製品や金銀製品・・・ああ、出るのはため息ばかりなり。時計のコレクションもすごかった。人が少なくてゆっくりと見ることができた。
  絵画はもちろんのことだけど・・・あまりのコレクションの数とその質の高さに今日はここ1つだけで満腹状態になってしまった。それなのにこれは個人コレクションなのだなぁ。スケールの大きさをまたまた痛感させられたまゆみであった。朝、シャンパンを飲んでおいて良かった。明日もシャンパンを飲んで勢いを付けて回ろう。じゃないとやってられない、そんなスケールだ。

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最終更新日: 2004/08/20