失語症記念館
南イタリアの旅

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41.ヴェネツィアの仮面

2003年 1月:

 旅行に来たらお土産を買わなければならない。変な習慣であるが、でも習慣である。仕事場に、友達に、犬を預けているところに、ああ親も待っている。あの人からもこの間お土産もらったような・・・と言うことで、リストを作っておかないと大変なことになる。
 出発前、空港からかけた電話での実家の母の弁・・・
「毎回、大変でしょう?お母さんの分は心配しなくて良いから、お父さんにだけは何か買ってきてやってね。楽しみにしてるみたいだから。・・・そう言えば前もらった化粧品はもう無くなちゃったけどすごくいい感じだったよ。」はいはい、つまり父も母もお土産を待っていると言うことですね。分かりました。
 考えてみたら、イタリアに来てからずいぶん経つのに買ったものと言えば野菜の種だけだ。早いところけりを付けておかなければ最後までお土産に頭を悩ませることになる。
 ヴェネツィアで有名なものと言ったら、カーニバルの仮面だ。カーニバルは日本語では「謝肉祭」と訳される。カーニバルはヴェネツィア特有のものではなくカソリック世界の宗教行事でイタリア各地でも行われていたという。つまり復活祭前の40日間お肉を絶って静かに過ごすらしいのだが、その前にたらふく食べて大騒ぎしようと言う10日間のことらしい。それならば普段通りの生活の方がお肉達にとっては良いんじゃないかと思う。イタリア人のことだもの、この10日間、いつもの4倍以上は食べて大騒ぎするのだろうから、その後40日間もお肉を絶ったって意味がないような気がするのは私だけだろうか。ここで気になるのは、現在本当にあの食いしん坊なイタリア人達が復活祭の前40日間もお肉を絶っているかということ。否である。
 日本の昔ながらの行事と同様にカーニバルも消えていったという。ヴェネツィア共和国がナポレオンによって滅ぼされた時にこのベネツィアのカーニバルも消滅したらしいが、1979年に外国人グループによりこのカーニバルが再現されたという。車も入れない中世の町並みが残っているこの町にこれらの仮面や昔の衣装は幻想的で本当によく似合う。冬の間何もアピールするもののないヴェネツィア市が観光の目玉に良いと目を付けて大々的に宣伝し始めて現在のあの仮面で有名なカーニバルへと繋がったのである。カーニバル中、この狭い町に1日に10万人の観光客が訪れるという。でも絶対寒い。そしてきっと押し合いへし合いなのだろう。・・・でも一度は見てみたいベネツィアのカーニバル。
 さてこの有名な仮面は元々は、コメディア・デラルテと呼ばれる即興的な民衆劇から来ているという。お店では太陽をかたどったアポロ神や花の模様などを描いた現代の作家が創作した美しい仮面が目立つが、昔ながらのものはとてもシンプルである。劇に使われたこれらの仮面はそれぞれの人間が属する世界を表している。代表的なものとしてはドットーレ(知識人)・カピタート(軍人)・パンタローネ(老人)・アルレッキーノ(道化)等がある。面白いところではカラス天狗のように鼻が長い白のお面。これはメディコ・デッラ・ペステと呼ばれる仮面だ。本当に日本のカラス天狗のようである。これはペストを診る医者が実際に使ったらしい。この長い鼻のところにペストに感染しないように薬草を詰めておく、又この長い鼻が邪魔するので必要以上に患者に近づく危険がないというわけ。この頃の医者は黒マントを羽織っていたらしく、又患者の衣服や布団をまくり上げるためにステッキを必ず持っていたようで、カーニバルでこの仮面をかぶる人は黒マントとステッキを揃えないと完成しない。
 安いものはやっぱりそれなり。だいたい7000円くらい出すときちんとした仮面が手にはいるようだ。ただし、割れ物だし、がさばる。だから沢山は買えない。そして誰もが仮面をもらって喜ぶというわけでもない。和室にこれらの仮面は似合わない。つい珍しいから、綺麗だからと買っても後悔するんじゃないかな。と言うわけでお土産向きではないかもしれない。仮面を飾るところはないけれどでもイタリア、しかもヴェネツィアに行って来た記念にと言うのであれば、仮面をかたどったブローチなんかはお洒落かもしれない。
 うちの夫は変なお面を集めるのが趣味である。パプアニューギニアの気味悪いお面などを結構ごろごろ持っている。私が、何年か前にヴェネツィアに来たときにここで仮面を買ってあげたのだがずっと旅行中はスーツケースの他に仮面を入れた袋を手に提げて行かなければならなかった。彼は今もその仮面をとても大事に持っている。そしてこの旅で2個目の仮面をゲットしたいと意気込んでもいた。しかし、「持ち帰るのが大変」「値段が自分で考えていたよりも高く値引いてくれない」という余り大きな問題ではないような問題で、何回もお店に足を運び、何時間も費やした挙げ句何も買わずにこの地を去ることになった。そして帰国したあと、「あの時に買っていれば良かった」という。ああ、何とも不思議なわが夫。まゆみにはこの人の行動が何とも解せない。

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最終更新日: 2003/01/16