失語症記念館
南イタリアの旅

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30.まゆみ、ポンペイを行く

2002年 9月:

 チルクム・ヴェスビアーナ線で、ポンペイへ。駅はそんなに大きくもなくひなびたかんじ。100メートルも歩くと遺跡の入り口だ。入り口で入場料を払っていざ出発!
・・・おお、忘れちゃいけないシティマップをもらわなければ・・・。

 考えてみれば当たり前のことであるが、ドーンと爆発した火山の灰であっと言う間に町が一つ埋もれてしまった遺跡だ。広大な敷地に決まっている。ガイドブックを左手にシティマップは右手に持って案内役は私の筈なのに、あ〜ら不思議ちっとも目的地に着かないじゃない。地図では整然と書かれている道路がそんなにまっすぐじゃなかったりするし、途中で何がなんだか分からなくなってきた。
 「バジリカ(裁判・政治・討論などの場)は確かあそこだったけど、これをまっすぐ行けば着くはずなのに・・・」・・・全然着かない。
 神殿やバジリカと言っても屋根はとうに落ちているので、今ひとつイメージが湧きにくい。加えて遺跡内の石畳の道はとても歩きにくく、そして照り返しも強烈で暑い、暑い、暑い。遺跡の中は滅多に日陰がない。水を飲みすぎるとトイレに行きたくなるが、トイレは売店くらいしかないし、観光客でひどく混んでいる。どうしたらいいのって感じ。遺跡の中はまだまだ発掘されていないところも多く現在発掘作業中のところもあった。

 発掘が終了した個人住宅はそれぞれに特徴があり面白い。だいたい人気のスポットは団体客が、ダダダーッと来てダダダーッと去っていくので分かりやすかった。道に迷ったら団体客を捜せ。必ずガイドブックに載っている何かにぶち当たる。ここでもモザイクの素晴らしさに唸らされる。モザイクに描かれている被写体は躍動感があり皆生き生きしている。2000年も前に描かれた犬や海洋生物が今にも動き出しそうだ。
 笑ってしまったのはヴェッティの家のプリアポリスの絵。ここは豪商の豪邸である。柱に凄まじく巨大な自分のペニスと金貨の入った袋を天秤に掛けるプリアポリスという神が描かれている。その価値、金の袋と同量なり? 面白がってこの絵はがきを買ったものの、出す相手に困って机に放り出してあるまゆみであった。ポンペイの町に行って時間があったら、町中にあるオチンチン探しをすると良いかもしれない。これもまた新しい側面のポンペイの楽しみ方かも。まゆみは・・・ちょっと食傷気味になってしまった。
 途中の小屋のような建物には発掘されたがまだ処理されていない出土品が沢山転がっていた。レプリカらしいが、灰の中から出てきた人間の形をした石膏のように見える人体も転がっていた。
 水道完備、下水道完備、公衆浴場完備、広大な劇場と小劇場そして円形闘技場。いかに経済と文化水準が高かったかが伺える。人口の60%が自由民、残りが奴隷だったらしい。
 今で言う銀座通りを歩けば、パン屋とか一杯飲み屋などが並んでいる。竈に火を入れればまた商売が出来そうな気配。お店の中に入るとひんやりした空気が漂う。外は暑くても中は結構涼しいのだ。うまい造りになっている。
 ビックリしたのはステファノの洗濯屋。その昔は人や家畜の尿で、布を洗浄していたという。つまりアンモニア消毒?よく分からないけど綺麗になるのだろうか?臭いはどうなのだろう。
 ポンペイアン・レッドとよく言われているポンペイの赤というのは思っていたよりずっと鮮やかだった。この色は現地から出る赤錆色の顔料を使って出すらしい。
 秘技荘の壁画は必見である。何となく不安をかもし出すような壁画に囲まれたこの部屋で一体何が行われたのだろう。豊饒多産を願って乱交パーティがあったという説もあるが、はっきりしたことは解明されていないと言う。
 それほど有名でない家の庭を飾るモザイクの何気ないその模様にもしばし心を奪われる。遺跡の町を見学するには体力、脚力、根気、そして好奇心を欠くことは出来ない。まゆみ半日ポンペイを散策。まゆみに欠けるもの・・・それは根気であった。
「私はもう疲れた。お腹がぺこぺこだ。のどもカラカラ!美味しいもの食べる。ポンペイじゃやだよ。」・・・遺跡の中の食堂はろくなものないし、人でごった返しだ。それにポンペイは滅茶苦茶田舎です。駅前も寂れてる。観光は団体バスで来ることが圧倒的に多いようだ。

「そうだナポリに出よう!」
「賛成賛成!」こう言うときだけ団結する夫婦である。
「ワインを飲もう!」
「そうしよう!」
急に活気づいた2人は一路ナポリを目指すのであった。そうチルクム・ヴェスビアーナ線に乗って。

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最終更新日: 2002/09/11