失語症記念館
南イタリアの旅

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21.フェリーの中で

2002年 6月:

 夕方6時45分、各自の特大スーツケースをごろごろ押しながら無事フェリーに乗り込んだ。フェリーは結構な大きさである。船内にはきちんとしたフロントがある。
フロントデスクはマホガニー・・・とってもゴージャス。乗務員もみなばりっとしている。先日購入したチケットを見せて、すんなりチェックイン。たった10時間のパレルモーナポリ間だというのに船内には映画館やカードルームまである。でもカジノはなかった。残念!

 私達の部屋は、フロントからすぐ近くで何かと便利。トイレもシャワールームも清潔で、ピシッとしていた。ベッドも思ったより大きくて快適。テーブルや調度品も何となく高級感あふれている。
「ふふふ・・・やっぱり、良い部屋は違うわぁ。」いちいち感動し嬉しくなってしまうまゆみ。本当のお姫様ならば、この程度ではきっと喜ばない。

「夕飯予約しといた方がいいかなぁ。」
「僕は絶対肉を食べる!イタリアに来てから本物の肉を食べていないからね。」答えになっていない。変なところに力が入る男であるが、今回の旅に突入する前にヨーロッパでは狂牛病騒ぎで大変だったのだ。だから彼はずっと牛肉が食べられるか心配していたのであるが、レストランのメニューに肉はあるものの、これと言って面白いメニューに当たらなかったと言うのが本当のところ。
「どっちにしても予約しないと食べそびれるかもよ。先に予約してからシャワーを浴びましょう。」

 出航の汽笛を聞きながら、離れていくパレルモを眺めながら・・・食事をとりたいという夫の言葉に従って私達は8時に予約を取った。
 出航間近のフェリーの中は人であふれかえっていた。大きな荷物を持った若いイタリア人や家族連れがひしめいている。早く乗船した人たちはロビーのソファーやベンチに陣取っている。部屋を取らずに乗っていく人もたくさんいるのである。あるグループは床にそのまま座り込んでいたりしていた。南イタリア人は家族の絆がことのほか強い。どうやらこの解放記念日にシチリアへマンマのスパゲティを食べに里帰りしてまたナポリへ帰る人がほとんどらしい。シチリアはおもだった産業がないのでナポリに働きに出る人口の比率が多い。だから日曜日の夜のナポリ行きのフェリーはとても混むという。月曜日のナポリはさぞかし仕事の効率が上がらないことだろう。祝日、祭日には必ず実家へ行ってマンマのスパゲティを!さすがマザコン男生息率世界一の国だ。

 私達が予約したレストランはそんなに混んではいなかった。なぜか?そこら辺にたむろしている人たちはめいめいに食べ物を持ち込んで自由にやっていたし、船内にはもう一つセルフサービスのカフェテリアがあった。
 汽笛を聞きながら、シチリア無事脱出をワインで乾杯!外は曇って小雨が降ってきたらしく、霧で遠ざかるパレルモはあっという間にかすんでしまった。
ほっとしたのか疲れがどっと出てきて私は食欲が出ず、ミネストローネとパンを頼んだ。夫はと言えば、やめとけばと言ったのに
「僕はカツレツ!カツレツを食べる。やっと肉を食べるんだもんね!」
ボーイに狂牛病のことを聞いたら、「イタリアは心配ないし、自分たちも心配してない」という。怪しすぎる。でも夫はやっぱりカツレツを注文。
出てきたそれは薄っぺらで、しかも小さくて夫をひどく落胆させた。
「なんだか僕は肉を食べている気がしないよ。こんなの一口でペロだよぅ!」
「だから船の中でお肉なんて頼むなっていったじゃない。」
だいたい南イタリアはピザやスパゲティ、それも野菜と魚介類がなんと言っても有名だ。お肉料理はフィレンツェあたりが良いのじゃないかと私は思う。

 お肉はたいしたことがなかったもののレストランは清潔で静かで、サービスも良かった。デザートなど食べながらシチリアの4日間について想いをはせた。
 雨が降っているわりには船は静かに静かにナポリへと向かっていった。
明日は7時にナポリ上陸予定。考えただけで緊張!夕方フェリージェットに乗ってソレントに取ったホテルにチェックイン。それまでナポリ観光。まずは荷物預かり所を捜して荷物を預けて、身軽にならなけりゃ。

   ナポリって何があるんだろう。ガイドブックを見て地理を頭に入れておかないとまずいから、今晩のうちに勉強しておこう。お部屋の空調も良い感じ、ベッドのスプリングもちょうど良い。ああ、シーツが肌に気持ちいい・・・。
「まゆ、ナポリが見えてきたよ。」
「あれ、お早う。もうナポリなの?」やっぱり・・・すぐに・・・しかもぐっすり寝てしまっていたのね。急いで着替えて、下船の準備。ナポリの知識はガイドブックの中。仕方ない着いてからが勝負だ。
さあ、いよいよまゆみ、ナポリへ。

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最終更新日: 2010/08/29