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出雲のご縁

2010/04

   
 4月の三分の一を過ぎたのに、出雲大社の桜はまだ満開の様子だった。約40年位前にマイカーで訪れた際は4、5月の連休に行ったような気がする。脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会のパフォーマンスに出ることになったがテーマが「縁」だそうで、何かのご縁が来るような気がした。

 出雲市民会館に行くと、熱気が伝わってくる。
 三人の方の対談が始まり、仲間の方は聞きにいったので、その間に事務局の方に挨拶をしに行こうと控え室の楽屋を出た。廊下には見張りの方がいて、人が居なくても安心して部屋を出ることが出来るようだ。
 挨拶を終えて楽屋に戻ると、誰も居ない筈だが、着替え用の囲いのカーテンが揺れている。誰?
 「誰?!」とカーテンを覗く。男だ! 着替えをしているらしい。折畳式ハンガーも大分厚いようだ。外にいる見張りは何をしているんだ!
 「誰なんだい?」
 「出雲のIです。」
 「誰に断って、入ったんだい。出雲のIと云ったって、分かんないよ。何処の誰なんだい?」
 カーテンを開いて、「出雲市のIです。」
 市のI、へぃ? 
  顔を見ると中々のもの。不審者には見えない!
 
 後で聞くと、恐れ多い。市の総責任者だった!
  そう云えば学会は出雲市と何時も協議していたらしい。
  立食式の懇親会では片手で飯も食えないからテーブルとイスを用意してくださいとか、懇親会後は時間も遅いので駅まで歩けないから送迎バスを用意してくださいとお願いをしていたのだが、みんな聞き入れていただいた・・・。
  なるほど、廊下の見張り番も何も言わない筈だ。
  「よ! いい男。」お世辞抜きに気に入った!

 基調講演には、長谷川 宏(哲学者)さん、北山晴一(社会学者)さん、中村俊郎(会社社長)さんの対談であった。 場内に入ると北山さんが講演していた。

  北山さんの話の中に、当事者と云う言葉が出てきて、当事者と云う言葉には「閉じこもり」が含まれているような話があった。
  私のパワーポイントの説明原稿には、私を含めて舞台に上がる仲間の紹介に、その「当事者 」と紹介する予定だった。しかし、我々、言葉は不自由だけれどオープンに世間に出ている当事者を何と云えば、いいのだろう!?
  云うだけ云うのは、知識人の悪い癖。
  仕方がないので、私の話には、
  「こちらが応援に駆けつけてくれました仲間です。先ほどの対談で北山先生が当事者と云う意味は閉じこもりが含まれるとおっしゃるのですが、ここにおられる仲間は閉じこもりではありません」と云う意味の話を追加した。
  何とそうすると、会場から拍手が起こった。
  健常者でも閉じこもりの人が居るのに、私はメールの会の仲間は閉じこもりではないことを自慢出来た。嬉しい。

 翌日、雨。学会は本番。しかし、松江見物に。
 一畑電車にゆられ、濡れた緑の風景、雨でかすんた宍道湖。約1時間の電車の旅は松江しんじ湖温泉駅に到着。
  お城の前にある島根県物産観光館へタクシーで土産ものを見に行く。
 出雲のホテルの朝食で出た岩のりやしじみ、出雲そば、立ち寄りが出来なかった島根ワイナリーのワインなどを購入。レジに並ぶ。
  支払いを終えたが、追加を注文。レジ係りは快く応ずる。15、6歩離れたコーナーへ品物を取りに行く。お菓子コーナーなので人だかりしている。チョット目を離すと、あのレジ係りの女の子が見当たらない。
  暫く待ったが、戻って来ない。
  隣のレジ係りに云うと、調べに行ったのではないかと云う。
  お菓子コーナーに行ってみると、品物はあるが取りに行ったレジ係りの女の子は居ない。自分で品物を持って戻り、別の人に追加を云い、確認させていたら、問題のレジ係りの女の子が戻って来た。
  「何をしていたんだ!」
  「お客さんに対応していました。」当然行う応対をしていると云う態度である。
 「何、お前は、最初に応対していたお客を何と思っているのか!」
  何と島根県の店員教育はこんなものかと怒鳴っていると、奥さんになだめられる。しょうがないから、手近にあるエレベーターに乗る。
 2階で木工品のストラップを買いながらレジ係りと話しをする。
 下で「こう云うことがあったんだよ! 店員教育をしなさいよと幹部に言ってくれ!」と云うと、「あら、ちょうど専務がそこにいるから」と専務を呼び止めてくれた。専務は「それは大変申し訳ありませんでした。良く教育しておきます」といった。

 羽田空港の食堂街で食事を済ませ、京浜急行の改札に行くと、もうじき発車するとの放送がある。エスカレーターに乗ったが、歩き降りが出来ない。イライラしながら、ホームに着き、やっと、間に合った。ドアが閉まる。電車の最後尾である。
  ホットすると、座席に座っていた女性が飛んできて「座りなさい」と声をかけてくれた。
  「ありがたい」と動き始めた電車に合わせ、女性と妻と両方から支えられながら席に座る。
  電車は特急だった。京急川崎で普通に乗換しないと横浜まで通過してしまう。
  「あっ、川崎だ」と降りると、普通は向かいのホームに止まっていたが、短い編成なので4両位前に止まっている。
  乗換の人たちが一斉に動く。
  妻が走っていって車掌に、「待ってて」とお願いをすると、「分りました」と答えてくれる。
  目的の駅に着いた。改札口は先頭の方にある。
  ホームを歩いていると、電車が動き出した。車掌がまだ上半身を乗り出してチェックをしている。
  「ありがとう!」と声をかけると、車掌がうなづく。
  あっ、聞こえたのだな!?

出雲大社のご縁はすごいのだ!



横浜にてへ


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最終更新日: 2005/04/29